# Room A — 作品コンセプト

**変化する世界から、変化の仕方を変える世界へ。**

世界が自らの変化の仕方を変えるとき、生命性と社会性はどのような関係として立ち上がるのか。Room Aはこの問いを、膨大な要素がつくる動的な世界と、その内部に滞在するLLMエージェントの関係として提示する。

観客の前に広がるのは、正面壁と床面を覆う映像と、空間を満たす音である。像と音は同じシミュレーションから生成され、一つの内部状態を異なる感覚から知覚するための、二つの現れとなる。

世界の基底では、無数の細胞や粒子が、局所的なルールに従って変化を続けている。その全体は、状態、振る舞い、空間的な関係によって複数の集団へ組織され、各集団は一つの主体として抽象化される。世界の内部に滞在するLLMエージェントは、集団どうしの関係と履歴を読み取り、その判断を、パラメーター、アルゴリズムの選択、集団間の関係へ戻していく。

だから、この世界では状態だけが変化するのではない。変化を生む条件そのものが、内部の出来事によって推移していく。一つの集団の膨張が、エージェントの解釈を介して、世界を支配するルール自体を書き換えることがある。生命的な振る舞いと社会的な振る舞いは、細胞から集団へ、集団から世界へと、異なる尺度を横断する一つの過程として現れる。

この世界の時間は、展示室の時間と一致していない。高速なGPU計算と、より長い時間を必要とするLLMエージェントの相互作用は、異なる速度で進行し、開幕前と閉館後の夜間にも計算は続いている。その履歴から、翌日以降の映像と音が生成される。

観客は、自分のいない時間に世界が通過してきた状態へ立ち会う。

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# Room A — テクニカル・コンセプト

**三つの時間尺度が、一つの作品システムに接続される。**

Room Aでは、ルールベースおよび機械学習ベースの生命・社会シミュレーションをGPU上で実行し、大規模な細胞、粒子、個体の状態を計算する。

シミュレーションを構成するすべての要素を、そのままLLMエージェントとして扱うことは、計算量の点で現実的ではない。そのため、全体の状態、振る舞い、空間的関係を解析し、関連する要素を複数の集団へまとめる。それぞれの集団を一つの主体として抽象化することで、大規模な数値シミュレーションと、LLMによるマルチエージェントの関係計算が接続される。

LLMエージェントは、各集団の状態と履歴を読み取り、定義された権限の中で、シミュレーションのパラメーター、使用するアルゴリズム、集団間の関係へ作用する。その結果はGPU上のシミュレーションへ戻され、次の状態を生み出す条件となる。この循環によって、状態だけでなく、状態を変化させる仕組みそのものが、シミュレーションの進行に応じて推移する。

シミュレーションの状態、出来事、集団間の関係、履歴は、一つの共通データとして記録される。同じデータを、映像の形態、運動、時間構造と、音の音色、密度、空間配置へ写像することで、映像と音は同期して生成される。正面壁と床面を覆う映像と、空間を満たす音響は、一つの内部状態を異なる感覚へ展開したものとなる。

GPUによる数値計算が高速に進むのに対し、LLMエージェントの相互作用には、より長い計算時間が必要になる。Room Aはこの速度差を、展示の時間構造として組み込む。開幕前に初期シミュレーションを長時間実行し、その結果から映像と音を生成する。開館中は生成された世界を提示し、閉館後の夜間にシミュレーションと生成処理を継続する。夜間に計算された状態は、翌日以降の展示サイクルで提示される。

高速な数値計算、LLMエージェントの相互作用、昼夜をまたぐ展示運用。三つの時間尺度が、一つの作品システムとして接続される。
